平成14年3月14日放映の山形テレビ「YTSゴジダスTVクリニック」において、院長が出演した内容を詳しく説明しました。

4. 胸やけ(胃食道逆流症)(2002/3/12 UP)


飲み過ぎたり、食べ過ぎたりしたときに「胸焼け」を感じることは、大部分の 方なら経験したことがあると思います。 

普段はつい放っておきがちな胸焼け という症状について、食道の病気を中心にお話しします。

逆流性食道炎と胃食道逆流症

以前は、胸焼けというと「逆流性食道炎」という病名をつけることが一般的で した。今でもこの病名はありますが、これは内視鏡(胃カメラ)で食道にただ れがある場合につける病名でした。

しかし最近は、実際に胃の内視鏡検査をしてみると、食道はきれいで全くただ れていないのに、胸焼けを感じる方がいます。そこで最近では食道のただれの 有無に関わらず、胸焼けやげっぷなど、食道内への胃酸などの逆流による症状 があれば胃食道逆流症(GERD、gastroesophageal reflux diseaseの略)と 呼ぶようになりました。

これは主に欧米に多い病気でしたが、最近では日本人 にも増えてきているのです。というのも食生活が欧米化し脂肪分の多い高カロ リーの食事を取る傾向にあることや、病気自体がお年寄りに多いため高齢化に より患者数が増えた、などにより、日本においてもその発症頻度が増加しつつ あります。

胃食道逆流症の症状 

ここで、胃食道逆流症の症状についてご説明します。胸やけは最も一般的で すが、それ以外にもいろいろな症状を示します。狭心症のような胸痛を訴える 方もいらっしゃいますし、喘息のような咳の症状、のどの痛み痛、声が枯れる、 耳の痛みなど症状は多彩です。またその症状も人によって症状が強く治療が必 要な人から、日常はほとんど気にならない人までさまざまで、しばしば氷山の ように例えられており、病院を受診しない潜在的な患者さんの数は相当数おら れると思われます。

胃食道逆流症の診断

診断は、患者さんの実際の訴えを元にして判断します。

主な症状は、

1)胸焼け(胸の中や、胸骨の裏側に焼けるような不快感がある)
2)酸っぱい、または苦い液体がのどまであがってくる
3)制酸剤を飲むとかなり早く症状が改善する
4)過去一週間の間に4回以上このような症状がある

などで、上の症状があてはまる場合には、逆流性食道炎が強く疑われます。 日常の臨床では、胃酸の分泌を押さえる薬を使用してみて、症状が良くなるか どうかで診断することもあります。 内視鏡検査で所見がなくても、胃食道逆流症と診断できますが、内視鏡検査は ぜひ行っておきたい検査です。 なぜなら胸焼けを起こす疾患はほかにもある からです。

胃や十二指腸の潰瘍や、食道癌なども似たような症状を起こすこと がありますので、注意が必要です。また、狭心症や心筋梗塞、など、心臓の病 気でも似たような胸の痛みを起こすことがありますので、症状をよく医師に説 明することが重要ですね。

最近のトピックス

最近知られてきた事実として気管支喘息と胃食道逆流症が関係があると言われ ています。これは欧米のデータなので、あくまでも参考ですが喘息患者の多く は胃食道逆流症を合併しているといわれています。またこれも海外のデータで すが喘息の患者さんに酸分泌抑制剤を使用してみると、6割から7割の患者さ んに喘息症状の改善、あるいは喘息薬を使う頻度が減ったとの報告があります。

また、一部の食道癌は胃食道逆流症に関係があると言われています。慢性的に 胸焼けの症状がある方は、内視鏡検査は定期的に行うことが大事だと思われま す。

最近胃・十二指腸潰瘍の原因の一つとして話題になっているヘリコバクター・ ピロリという細菌はご存じの方も多いと思います。この菌を退治する除菌療法 を行うと、胃や十二指腸の潰瘍の再発率が減るのですが、この除菌療法を行っ たあとの患者さんで胸焼けなどの胃食道逆流症が増加するという報告がありま す。この原因として、それまでピロリ菌で押さえられていた胃散の分泌が、除 菌によって活発になったためと考えられています。

胃食道逆流症の治療

軽症の方から重症の方まで、大事なのは薬物療法です。基本的には胃酸を分泌 する働きを押さえる薬が使われます。これにはH2受容体拮抗剤とプロトンポ ンプ阻害剤という二つのタイプの薬があります。特に最近すぐれた効果で注目 されているのがプロトンポンプ阻害剤という薬です。

以前は保険適応の点で8週間以上の長期投与ができなかったのですが、最近は 長期間使用することが可能になりました。その他、補助的な薬剤として消化管 運動賦括剤などを併用することがあります。

薬だけではなかなか良くならない重症例に対しては、手術療法もあります。最 近は腹腔鏡を使った手術も行われるようになり、体にかかる負担もかからなく なってきています。ただ日本では欧米と違い、重症例が少ないため、手術まで 必要とされる患者さんは少ないようですし、まだ一部の医療機関でしか行われ ていないようです。

日常的で気をつけたい点

日常生活として、気をつけておきたい点をあげてみます。 おなかの圧力の上昇が胃の内容物の逆流を引き起こしてしまうことから、次の ことに気をつけましょう。重いものを持ち上げるときや椅子に座って仕事をす るときの前屈み姿勢、排便時などの力みをなるべく避けるようにすること。ま たコルセットやベルトなどで腹部を強く圧迫しないようにすることなどです。 寝る時の注意点として頭を高くすることなどがあげられます。

食事の注意点として、腹八分目にすることや就寝前の食事を避けることなどは 常識的な事ですが、それ以外にも一般的には以下のようなものは胃食道逆流症 を悪化させるので避けた方が望ましいといわれています。香辛料の強いもの、 コーヒー、チョコレート、甘味和菓子、たばこ、アルコール、緑茶、たまねぎ、 かぼちゃ、さつまいも、トマト、脂肪の多いもの。但しこれらの食物は症状を 悪化させる可能性がいわれているだけで、たばこ以外に関しては絶対摂っては いけないという意味ではありません。食べて胸焼けを起こしたことのある食べ 物は控えめにしましょう。

以上のように、胸焼けは普段よくありふれた症状でありながら、つい我慢した り、そのままにされがちな症状です。先ほどお話しした酸分泌抑制薬を用いれ ば、ほとんどの場合は症状は良くなります。また胸焼けの奥にひそんでいる病 気は食道炎以外にもありますので、そのままにしておくことは危険です。 もしここに書いてある症状で日頃お悩みの方は、是非ともお近くの医療機関を受 診されることをお勧めします。


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